「京介社長。」
京介は珍しくというわけでもないが社長机に向かってパソコンによる作業を行っている。そこに霧崎有香という『片島コンプリートドージンズ』の社員『霧崎 有香』が書類を持って話し掛けてくる。
「どうしたんだい?愚民?」
霧崎有香、思わず書類を握りつぶしそうになったが押さえ込む
「いえ、弱小会社でも何かキャンペーンなどの催し物をしたらどうかと思いまして」
「キタ!キタ!キター−−−−−−−!!」
と、叫び上げる京介
「その意見を待っていたんだよ!なんだい!?どんな萌え要素の高い催し物だい?それともどこかのサークルを大きく、よいしょするかい!?」
無駄にテンションの高い京介に着いて来れるものはいるのだろうか?
京介さんと奏さんの関係事情
片島京介といえば、会社社長、一子の父親と言う名目を持っている。そんな彼が自分の萌えを語る時が来た
「そういえば、社長ってなんか好きなサークルとかあるの?」
と、神奈義 恭子が聞く。
「サークルは別に重視しないけど、どちらかというとシチュエーションとか?」
「例えば?」
ふと、京介の好みが気になる神奈義 恭子。彼女は社内の噂では社長婦人の座を狙っているらしい。
「メイドさんは欲しいなぁ。我が家にいたら、大いに助かる。我が愛し子の純一君のお世話をしてもらう。」
一瞬自分の事じゃないのかと突っ込みたくなる恭子。
「それ以外には〜、シチュエーションなら真夜中の空で愛を叫ぶシーンとかジーンとするね。」
「うわ、意外にロマンチスト。けど、ベタ」
そう言う有香に
「ほっときなさい。」
と、ぴしゃりという京介。
「大学生のキャンバスとかシチュエーション的には最高だね。どっかの受験を控えてるんじゃなくて、大学内で起こる波乱劇とか最高だわ。」
京介は目を閉じなら思いを馳せて、つらつらと言い述べていく。それに驚く社員達。
「おまえらしいな。」
そう言う副社長「村山 真一」の姿があった。しかし、社員達はそのいつもの傍若無人な京介の姿しか見ていない為か真一に軽蔑の眼差しを送り始める。
「京介社長って意外とロマンチストだって言うのが意外だね〜。」
社員達の言葉に
「はっ!?つい、素を出してしまったようだ!愚民ども!仕事しろ!アリのように働け!俺もアリのように働くから!!」
そう言って京介は机に片足を立てて言う。しかし、自分もアリのように働くということは自分を愚民としての自覚を持っている証拠でもある気がする。
そして、仕事が再開される最中。
「社長、今日、飲みに行きません?社長のそのロマンチストな話を聞きたいって言う女性社員が多いんですけど?」
1人の男性社員が酒を飲むジェスチャーをしながら言う。
「おっ、たまにはいいかな?じゃ、ちょっと待ってね。」
携帯を取り出してショートキーでとある人物に電話をかける。
「ヤー、マイサン!元気してるか!?妹増えたらどうする?兄貴とか出来たらどうする!?」
『寝言言ってないで用件言えよ。』
と、電話の相手は純一のようだ。その冷静さと言ってか成れた口調で返される。
「今日、飲み会だから僕の帰りが遅くなるからって夜鳴きしないでね!」
『するか!』
京介と純一の会話は社員にとっては微笑ましいものでもあった。辛い現代社会の中で父と子の麗しい家族愛だというべきか、それに惚れ惚れしている社員達。
「社長、60なったら赤いちゃんちゃんことか送るべきですかね?」
「まっさかー、その前に後継者見つけて、僕は世捨て人になるよ。」
と、適当に話し合いながら社員と京介達は居酒屋『ごっつぁんです』に向かう。そこに非番のメイド長がいるとは知らずに
「「あ・・・・・・。」」
二人の声が通った。入ってきたばかり京介と、ほろ酔い気分で日本酒をカウンターで飲んでいるメイド長『月琴 奏』がいる。
「片島 京介様ではありませんか?」
「コレハコレハ、月琴 奏サンデハナイデスカ?」
二人の会話がぎこちない。
「チョット、他ノ場所ニシナイ?ココハチョット・・・・・・。」
ロボット口調の京介に社員達も賛同せず
「座敷ありますから、そこにしましょうよ?」
「そ、そうだね。」
そう言って座敷に座る一団。
「しかし、社長って、結婚しないんですか?もうすぐ三十路ですよ?」
「うーん、考えたことないって言ったら嘘になるけど、あんまり、そっちの方向に向かないようにしてる。」
「なんでですか?」
「過去の経験からとでも言っておこうか。ま、貴様らみたいな愚民共には私の過去など壮大すぎて計り知れないだろうがな!」
京介はさらりと流してしまう。
「じゃあ、純一君を拾った秘話とか!」
「そうかそうか!僕と純一君の愛と友情と家族愛の物語が知りたいか!」
すると声高らかに京介がコップをマイク代わりに立ち上がる。
「ほたーるのひかーりは〜♪」
「なぜ、ホタルの光?」
「おっと、いけない。じゃあ、純一君と僕の出会いを話してやろうじゃないか!?」
周りから歓声の声があがる。
「孤児院で引き取った。終了!!」
沈黙が世界を支配した。
「しゃ、社長、もうちょっと、ないんですか?」
「いや、事実だし。」
そう言って京介は座る。
「社長って時々わからないですよー。」
「ははは、秘密のある男って危険な香りしないかい?」
「それって通常、女にありません?」
と、和気藹々と話していくドージンズ社員。
京介達の話は終幕を迎えて二次会前に京介は帰るふりをした。そして、京介は居酒屋に戻った。
「何気に話し聞いていたよね?」
と、カウンターに座る京介
「な、なんのことかなー?」
動揺しつつも京介の言動に驚く奏
「盗み聞きなんてたち悪いにゃー。」
そう言いながら京介は奏の隣に座っていた。
「ま、どうでもいいけどね。」
「それで、何か用?」
「昔の顔なじみに出会ったからね。」
京介はへらへらと笑って店主に
「熱燗!ロックで!」
明らかに場所を間違っている。というよりも注文を間違っている。熱燗をロックで頼むということは熱湯に氷を入れているようなもの。
その注文にまともに嫌そうな顔をする店主
「冗談冗談、銘酒『魔王』ね。」
そう言って、マスを受け取る京介。ちなみに余談だが銘酒『魔王』は実在する。
「うわ、結構、アルコール度高い御酒じゃない?」
「大丈夫、大丈夫。」
数分後
「だーかーらー、聞いてるの!?京介!?」
泥酔している奏がいた。対して、京介はケロッとしている。
「月琴さん。飲みすぎだよ。」
「何よー?私をフラせるように仕組んだ張本人が何言ってるの〜?」
奏は絡む。京介に絡む。腕を京介の首にかけて耳元で言う。
「まぁまぁ、落ち着いて。」
真面目になだめる京介。
「これが、落ち着いていられるかってぇのぅ!?いつもフラフラしてるあなたが悪いのよっ!!」
「これでも一子の父親なんだけど?フラフラしてる?」
「してるわよぉッ!!結婚もしないで〜。両親がどんなに心配してるか知ってるの〜!?」
「ま、それはわかるけどね。妹だって結婚してるし、片島家の血筋は絶えることはないよ?」
京介はヘラヘラと笑いながら言うと、急に奏が京介の両方の頬を掴む。
「いひゃいいひゃい!」
「そんなんだから心配してるのわからないの〜!?」
「わひゃっひゃはら!はわしへー!!」
京介は頬を引っ張られながらも言葉を放つ
「だから、京介!早く結婚しなさい!!」
と、言われた瞬間、京介の眼が真剣になる。それに驚いて手を離す奏
「それは、僕の判断でもあるけど、一概に決められないよ。」
「え?」
「僕が結婚するということは少なくとも純一君に負担を与えてしまうかもしれない。僕はね。純一君の前にいつか出てくる親が出てきた時、守らなくちゃいけないんだよ。それなのに結婚、結婚なんて浮かれてる場合じゃない。彼が成人した後なら結婚だって考えてもいい。だけど、それまで結婚する気は一切ないよ。こんな事いったら、楓ちゃんに・・・・・・うーん。殺されるかも知れないけど、別れないって確約はないよ。なんか、事件が起こって別れざるを得ない事態だってある。そんな追い討ち時に自称親なんて出てきたらどうする?はっきり、純一君は潰れちゃうよ。だから、僕はそんなことにうつつを抜かしている暇はないんだ。」
京介の真剣な独白に奏は
「だから、あなたは優しすぎるのよ。もうちょっと冷たく生きなさいよ。」
酔いが覚めたのか真剣な言葉を放つ奏
「大体、僕が本気出したら、アメリカ大統領夫人だって胸キュンの男になってるからね!」
雰囲気をぶち壊すのはやっぱり彼だった。
「京介って、ほんと空気読めない男よね。」
「はっはっは、何言ってるの?空気を読まない男なんだよ。あ、もうちょっと言い換えるなら、空気を読んだ上でぶち壊す男なんだよ。」
そう言って京介は笑う。
「ほんっと、昔のあなただったら、そんなんじゃなかったのに・・・・・・。」
「昔の僕は僕じゃないよ。今の僕が僕なんだよ。」
そう言って京介はもう一杯、日本酒を頼む
「じゃー、飲みなおそっか?しんみりしちゃったし!!」
「わ、わかったわよ。」
結局・・・・・・。
「だーかーらー、早く結婚しなさい!!」
「結局、こんなオチなのね。」
「京介のバカァ!」
ポカポカと京介を叩き始める奏
「ほらほら、落ち着いて・・・・・・ね?」
「すぴー。」
と、寝息を立てて寝ている奏に軽い溜息をついてから
「ほら、起きて、肉奴隷。」
そういった瞬間に奏の拳が京介の頬に命中する。
「肉奴隷・・・・・・じゃないもん。」
寝ぼけているのに反撃が来るベタなパターンだ。
「仕方ないか。親父さん、御勘定。」
そう言って会計をする京介。値段を釣りがないようにきっちりと払って、奏を抱える。
「釣りはいらねぇぜ!」
と、言って去っていった。ちなみにぴったりと払っているので釣りはない。
「あー言う、にーちゃん、うちにも欲しいなぁ。」
そうつぶやく店主だった。
「おい、親父、酒ねぇのか?酒!」
「うるせぇ、クソガキ!さっさと寝やがれ!!」
店主も店主で苦労しているようである。
京介は奏を抱えていたが家がわからず吉川邸に来ていた。呼鈴を鳴らすのも気が引けたが仕方なく呼鈴を鳴らした京介
「はい、吉川ですが?」
「あー、すいません。御宅のメイド長拾ったんですが?」
と、インターホンから聞こえる声に答える京介
「どなたでしょうか?」
「あー、今噂の片島純一君の親父です。」
「しょッ!少々お待ちください!!」
ドモリながらもインターホンの応答がなくなる。
「京介のバカ〜。」
寝言を聞きながらも京介は奏をしっかりと背に抱える
「お、お待たせいたしました!!」
と、1人のメイドがやってきた。
「ほら、女の子の細腕じゃ大変でしょ。僕がベッドまで連れて行くから案内してちょ。」
そう言って中に案内される京介。時間は深夜、館内は暗く人の通りはない。そんな夜の廊下は不気味にも感じる。
「あれ、お義父さん」
「や、我が娘。」
と、現われたのは楓だった。
「どうしたんです・・・・・・って、奏?」
「いやー、飲みに付き合わせたら彼女が先に潰れちゃってね。家わからないからこっちに持ってきちゃったよ。ゴメンね。起こしちゃって〜。」
そう言って、奏を抱えながら言う京介
「きょうすけ〜・・・・・・。」
寝ぼけ眼で言う奏
「お義父さんと奏って知り合いなんですか?」
「まぁね。大学時代の友人さ。」
えへらと笑う京介だが、次の奏の言葉でそれ以上だということが明らかになる。
「なんで・・・・・・いっちゃったの?きょうすけ・・・・・・。」
「「「・・・・・・。」」」
沈黙と暗闇がメイド、京介、楓を支配した。
「今度詳しく話を聞かせてくださいね。」
「はっはっは、それは秘密の多い僕に惚れたからかい?」
「まさか、私は純一さん一筋です。」
軽く笑顔で京介の挑発をかわす楓
「ま、いいよ。僕もいい加減、決着をつけないとね。」
京介はそう言いながら奏の休憩室に向かった。
「よいせっと・・・・・・うわ、声出しながらやってるって歳喰ったな僕も。」
「きょうすけ〜。」
「はいはい、僕はここにいるよ。」
そう言って立ち上がろうとすると
「ん?」
奏が京介の服を掴んでいる。
「放せ、雌豚。」
その言葉と同時に枕が飛んできた。
「うーん・・・・・・。」
「・・・・・・ホント、寝てるのかね?」
そう言いつつ、内ポケットをゴソゴソと何かを探し出す。
「取り出したるは衣服用ハサミ〜。」
まるで秘密道具を出すかのように言う京介
「そして、掴んでいる服のところを〜。」
奏が掴んでいる服の周りを
「チョッキンしちゃいましょう。」
そう言って背広に関わらず、京介は服を切り離した。
「それは末代まで飾るといい事あるかもよ?」
そして、京介は休憩室を出て行った。
「ごめんねー。じゃ、僕は帰るよ。」
「奏を放っておいていいんですか?」
「彼女も子供って歳じゃないでしょ?」
そう言って京介はその場をメイドの案内で去っていった。
後日、京介が外回りしていると
「さーて、次はっと・・・・・・。」
「みぃつけた〜。」
幽鬼の如くゆらりと現われる奏にびくりとする京介。そして、深呼吸。
「ポマードポマードポマード!!」
「私は口裂け女か!!って、あれ?」
と、京介の姿がいなくなっている。場所は住宅街、同人のサークルを当たるにはそのサークル代表の家に行くのが主流らしい京介にとっては格好の穴場だ。
「奏様!私達メイド部隊が!」
「あなた達も、京介に感化されてきてるわね・・・・・・。」
そう言って結構呆れている奏。実際、そんな部隊があっては困る。
「って、待てい!!」
1人のメイドの肩をつかむ。
「な、なんでしょうか?」
「なんでメイド部隊で私より身長のある男臭いメイドがいるのよ?」
「ばれちゃー、しゃーねぃなぁ、かっつあん!!」
と、バックステップする男臭いメイド
「いや、ルパンとかじゃないでしょ?」
「せっかく買った変装セットなのに・・・・・・。」
京介はそう言って服をはぐ。すると、先ほどのビジネススーツの京介が現われる。服はマジックテープで脱着可能になっている。
「んじゃ、そう言うことで!」
颯爽と消え去ろうとする京介だが
「そうは!」
「させない!」
「メイド部隊!!」
京介を捕獲するメイド部隊。
「うーん。君のところの侍従さんって教育されてるね。」
「いや、少なくとも、あなたの影響もあるわよ。」
「そうかな?」
結局、捕獲された京介は吉川邸の別居室という、吉川邸内の小屋に監禁された。ちなみに、京介は気を失うわけでもなく、まるで被疑者に任意同行を求め、任意同行したような感じで連行された。
「え、僕、監禁されちゃうの?純一君!そう言うとき事、ヒーローの参上だよ!」
いるはずのない純一を呼びかける京介
「いや、ここって防音設備なってるし。」
瞬間、京介でもぞっとするような言葉が放たれた。
「で、用件はなぁに?子羊ちゃん。」
「ぶん殴るわよ?」
「そしたら、聞きたいこと先延ばしになるよ?」
京介はニヤリと笑う。
「と言っても、君が聞きたいのは大学時代の事でしょ?」
「わかってるなら、言いなさいよ。なんで、わざわざ『私に振られる』ような真似をしたのか?」
「んー、君の両親さ。両方とも厳格じゃん。」
いたって軽く話し掛ける京介。
「あの頃の僕は知ってるよね。」
「ええ、何かと問題という問題を起こす問題児。と言っても、問題って警察沙汰になるような問題じゃなくて他の受講生達を楽しませる問題児ね。」
「そそ、それが原因。」
けろりと言った京介の言動に
「どういうことよ?」
「僕が問題児だって言うのが君の親に知られてね。『これ以上、娘に付きまとうなら、出るところまで出てもらう』〜って感じの事言われてね。」
京介の落ち着いて話しているが何か楽しそうにも感じる。しかし、奏は違った。
「ふーん。で、本当のところは?」
「会社の倒産危機」
息継ぎもせずにさらりと言いのける京介
「君の親がサラリーマンだって言うのは知ってのとおり、知らなかったら流石にバカだけどね。その君の親が働いている会社が倒産危機に陥ったんだ。んで、吉川エレクトロニクスに吸収合併して、現在じゃ双肩を並べているけど、結構やばかったらしいからね。だから、君の親に感付かれる前に振られる手筈を整えたのさ。」
と、言うが
「ま、出来た話よね。私の父さんは普通のサラリーマン、会社の社長というんだったら話はわかるんだけどね?」
さらりと流してしまう奏
「まぁ、こういう話に免疫ないからなぁ。本音言っちゃうと、教授がね。『君と付き合ってから学力が低下している』って言われてね。流石に僕もこれはいけないと思って、振らせる手筈を真一とかと整えたって訳。」
京介の言葉に奏は凍りつく。
「じゃあ、私のためにフラレたって言うの?」
「ぴんぽーん。だいせーかーい!じゃ、僕帰るね。って、拘束されてちゃ動けないよ!ほどけ!そのまま、僕を君なりに改造するつもりか!?」
と、ふざけた態度を取る京介
「・・・・・・んじゃないわよ。」
「冗談じゃないって?僕にはそれが正統の手段だと考えたよ。君は物事に執着すると周りが見えなくなる傾向があったからね。僕が言っても強がるだろうし、他が言っても無駄だったからね。だから、すっぱり後腐れないように舞台を仕立て上げたのさ。」
その言葉に笑顔な京介だが言葉に棘があった。
「こんな事いったら、僕は最悪になるけど、言わせて貰うよ。君だけが辛い顔してるんじゃないよ?僕だって辛かったからね。確かに、京介は酷いと誰もが言うだろうね。けど、喧嘩別れするのも嫌だし、自然消滅も嫌だった。だから、最低限の繋がりだけ持って別れるように模索した。」
後悔、無念、様々な負の感情が奏に圧し掛かる。
「交際が終わってから純一君を拾っていたのは気を紛らわせる為?」
「それは、お門違いだね。僕はたまたま親父様の友人を助けて欲しいって、うちの親父様から言われて、自分なりに考えて純一君を引き取った。僕は僕なりの判断で行動した。そこに奏さんが入る余地はないよ。」
京介の言葉には確固たる意志が灯っている。
「そういわれたら反論の余地がないじゃない。気付いて悪いのは私だけでしょう・・・・・・。」
「どうだろうねぇ〜。もしかしたら、僕はもっと悪い事してるかもよ?」
京介に悪びれた様子はない。
「恐喝だろ?」
そこには意外な人物がいた。
「真一?」
そう、吉川家とは無縁な人間、真一が扉の前で立っていた。
「会社帰って来ないから純一君に連絡してたら月琴にたどり着いたんだ。」
「村山くん知ってるの?」
「なんせ、こいつの片棒担いでたからな。こいつ、教授の不倫写真撮って恐喝してたんだよ。月琴の学力低下は多少目を閉じろって。」
別に京介は焦った様子はない。どちらかといえば来るべき時が来たと言わんばかりに落ち着いている。
「多少?」
「そうだ。多少、徹底していなかったんだよ。別にそのまま学力落ちたら仕方ない。また、元に戻ったら万々歳ってね。んでも、振られるように仕組んだわけだから、新しい恋を見つけるのも早いだろうって振られるように仕組んだんだ。」
「じゃあ・・・・・・。」
「僕はゴメンだね。って、言っても覚えてるわけないか。僕と前、飲んでた時の言葉を覚えてる?」
京介は奏の言葉を遮った。
「『純一さんが成人するまで結婚はしない。』」
奏の言葉に真一は
「おまえ、まだ、そんな事言ってたのか?」
「あれ?結構本気だったんだよ?」
「おまえが、真面目じゃないから受け取れねぇんだよ。」
「あはははー、ま、真面目と不真面目は紙一重だからね。」
妙に説得力のある言葉に真一は呆れるが、奏は絶望したような表情になっていた。
「純一君が成人するまで片島京介って人間は結婚しないよ?」
「親父って女心わかってねぇな。」
「純一!貴様!何故ここに!?」
真一の後ろには片島カップルが立っていた。
「そんなどっかのゲームキャラの台詞なんてどうでもいいから…。」
「京介さん、そんな頑なな態度してますと、私が権力行使に入りますよ?」
このときだけなのだろうか、楓は京介を『お義父さん』と呼ばずに『京介さん』と呼んでいた。
「いや、待て、楓、そしたら、俺の生活も危うい。」
素直に焦り始める純一
「大丈夫です。純一さんは私が保護しますから、京介さんは私のものですから!」
「見事なジャイアニズムな嫁さんだな。いや、嫌がってないだけマシか。将来ヒモか?」
「真一さん!それは勘違いだ!これでも楓の親父さんには経営力はないけど、心があるとか言われたんだ!!」
「いや、その経営力が会社を担ってくんだよ。」
と言うか、それって認められているかもわからない状況だ。
「なぁ、奏さん。親父の拘束を解いてくれないか?」
「で、でも・・・・・・。」
「大丈夫だって、親父も空気読んでるようで読まないようにしてる人だ。流石にここでとんずらこいたら、息子に何しでかされるかぐらいわかってる。」
純一の不敵な笑み。始めてみる一同は悪寒を覚える。
「わかったよ。今回は空気読んで行動しちゃうから拘束解いてよ。奏さん。」
そう言われて奏は京介の拘束を解いた。そして、立ち上がる京介に純一は正面に立った。
「じゃ、親父、歯食いしばってくれ、こういう風にやりあうのは初めてだから、手加減できないと思う。」
「うん、わかったよ。」
そう言って京介は眼を閉じて、純一は振りかぶった。
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
京介が失神した。そして、他の一同、もちろん純一は除いて驚いている。
「え、駄目だった?」
一同が純一の言葉に思い切り何度も首を縦に振る。
「い、や、純一君。それは反則技だよ。」
それはその通りだ。純一は殴るのではなく。蹴ったのだ。それはそれはとても大事なところを
「君はある意味、京介よかタチ悪いな。」
「え?え?」
「と、とりあえず、屋敷のほうに連れて行きましょう。」
京介が目を覚ますと一同が除き見下ろしていた。
「とりあえず、生還しましたー!」
と、笑顔で言う京介
「純一君。アレは流石にキいたよ。」
「わ、わりぃ。」
「まぁ、いいけど、で、言いたい事って言うのは?」
京介はへらへらとしているが眼は真剣だった。深呼吸、そして
「俺を舐めんな!大体は奏さんから聞いた。俺に本当の親が出てきても本当の親は『片島京介』であって名前も知らない親を名乗る人間じゃない。」
「え?」
純一の言葉に京介は気の抜けた表情をする。
「俺は『片島 京介』の息子『片島 純一』だ。この名前は親父から貰ってこの名前に誇りを持っている。」
その純一の言葉に
「埃が舞っている?」
ボケをかます京介
「ぶん殴るよ?」
「ゴメンゴメン。ちょっと、マジでスゲェ、嬉しいことを言ってくれたからなんて言えばいいのかわからなかった。」
「まだ、続きがある。」
そう言って、一同は口を閉じる。
「だから、結婚しないとか考えるな。前に言ってたよな。親父と俺が認めた人以外、結婚するつもりはないって?なら、俺は奏さんを認めている。あとは親父の判断だけだ。」
純一の言葉に周りは静寂した。
「あー、俺、用事思い出したから帰るわ。今日は、直帰でいいわ。継続処理は俺がやっといてやる。」
そう言って真一は部屋を出て行った。
「純一さん!今日こそ、私と甘い夜を過ごしましょう!」
楓も続いて言うと
「え、ちょっと!まだ早いって!!楓!かえでーーーーーーー!!」
そう言ってずるずると楓に引っ張られて純一と楓は部屋を出て行く。そして、残ったのは奏と京介だけだった。
「「・・・・・・。」」
2人は沈黙する。
「京介?」
先に口を開いたのは奏だった。
「どうしたんだい?」
「わ、私は、今でも京介の事が好き・・・・・・。愛してる!!」
正面切った奏の告白
「哀しみと書いて『哀』してる?」
瞬間、奏の拳が飛んできた。
「真面目に!!」
「はは、そうだね。この時ぐらい、皆に甘えようか。」
そう言って、京介は奏の正面に立った。
「えっと、僕は月琴 奏さんに惚れています。」
京介の真剣な瞳が奏に向き、奏はそれに対して同じような視線で京介に返す。
「だから、付き合え。」
急に奏の顔が凍り付いた。
「つ、つ、付き合えですって?」
「あ、ごめん。言葉が足りなかった。結婚を限定に付き合え。」
「いや、限定って・・・・・・前提じゃないの?」
あくまで京介のペースに少し呆れ始める奏
「うん、限定。大丈夫だって、僕は惚れたら一直線。ぶっちゃけた話。純一君が認めてなくても僕だって良識はある。だから、純一君が反対しても押し通るつもりだし」
「それ、嘘って言うのよ。知らない?」
先ほども純一が言っていたが『俺と親父が認めた奴じゃないと駄目』という論理は本人が打ち砕いていた。
「さぁ、何のことだかね?」
「じゃ、一つ聞かせて、あの時の事、後悔してる?」
「いんや、全然、僕は僕の道を行く。僕の会社の社訓知らないだろうから教えてあげるよ。『今日も今日とて我が行く。しょうが_____』」
「『障害物なんてぶっ飛ばせ』でしょ?知ってるわよ。いつも言ってたじゃない?」
と笑顔の奏
「す、ストーカー!?」
再び、奏の拳が飛んできた。
「殴るわよ?」
「殴ってから言うんじゃないよ!!純一君みたいなことしないでよ!!まったくもぅ!!これでもキンチョーしてんだからね。」
京介の言葉に奏は笑い始める。
「ぶははははは、ま、愚かだったのはお互い様だよ。」
「愚か・・・・・・ねぇ。」
京介の言葉に納得していない奏
「僕はね。君にも謝らなくちゃいけないけど、純一君にも謝らないと・・・・・・いや、御礼を言わないといけない。僕が気負っていたことを一気に流してくれたからね。」
京介は笑って言うとベッドに座り込む
「そりゃあ、あなたの気負いよ。私の目から見ても純一君はしっかりしてる。あなたが、不出来な親を演じてるからね。教えることだけはしっかり教えてた。でも、ある意味賭けだったんじゃないの?変な方向に向かっていく可能性だってあるわよ。あんな放任主義な教育だと・・・・・・。」
「そうだね。だけど、純一君は真っ直ぐに育ってくれた。それだけでも僕は感謝したい。」
京介の本音を言うが、ふと疑問がよぎる。
「って、答えを聞いていないんだけど?」
ぎょっとする奏。そして、恥ずかしそうにもじもじと
「私で・・・・・・いいの?」
「うん。君じゃないと嫌だ。あーあ、純一君が成人してから姿現そうと思ったのに運命ってのも残酷だよねぇ。」
京介は、わははと笑いながら言う。しかし、奏には腑に落ちない点があった。
「え?成人してから姿を現す?」
「そりゃね。もし、振るように気が付いていなかったら、そのことは伏せて再度挑戦しようと思ってたからね。」
割と大胆な発言。そう思った奏
「ふーん。自分の罪を隠して本人に近づくなんて無謀じゃない?」
「まーね。だけど、僕はそんな人間だよ。無茶だといって止めたらそこで負け。だから、当たってみる。それで砕けたら諦めるよ。人身関係は粘らず、サラサラでね。」
「淡白と言うか、なんと言うか。」
京介はそう言って首を振って1人で納得している奏の手を掴む。
「どうしたの?」
「さっきから、話が脱線してばっかりだからね。もうちょっと、話そうと思ってね。って言っても僕が脱線させているのか?」
と軽く笑ってから京介は奏を見つめて
「でも、それほど、真剣なんでしょ?」
「ま、ね。」
「そう!そこでキスよ!接吻よ!!」
と、ドアを少し開けて除いている楓とドアの隣で壁に寄りかかって突っ立っている純一がいた。
「なぁ、楓、無粋な真似はやめようぜ。」
「で、ですけど・・・・・・。興味ないんですか?いつも適当に振舞っている御父様が真剣に振舞ってるんですよ?」
楓の言葉に少し悩ましげに
「い、いや、そうだけどよ。親父だってプライベートとかあるだろ?」
「そうですけど、やっぱり、知る権利が・・・・・・。」
「下手なところで野次馬根性出して・・・・・・。ほら、楓、行くよ。」
純一は楓の首根っこを捕まえて、その場を離れようとする。
「あぁっ、純一さん離して!」
「嫌だから掴んでんの。知る権利って言っても、後で聞けばいいだろ?」
そう言ってずるずると引っ張られていく楓と引っ張っていく純一だった。
「純一君!妹は待っててね!!」
と、扉を開けて笑顔で手を振る京介
「うっせぇ!黙ってろ!!」
思わず大声で返す純一
「ホント、大丈夫かしら・・・・・・」
急に不安になる奏だった。