「は?」
「悪い!おまえにこんなこと頼むとうちの子がかなり心配なんだが頼れる奴がいない!1日だけでいい!うちの子を預かってくれ!!結婚記念日だからちょっと遠出するんだ!」
「血痕記念日?初夜?」
「いや、絶対、お前の言っているものとは違う。ってか、社員のこと考えて、下ネタはやめろよ。」
そう村山真一、片島コンプリートドージンズの副社長に言われたのが先週のことだった。
片島父子と子供な突然
そして、今日、運命の日がやってきた。
「んじゃ、よろしく頼む。」
「わかった。この子たちを僕なりに改造すれば良いんだね?」
「やめろ!せめて、この子たちはお前の毒牙にかけたくない!!だから、純一くんを見込んで預けるんだ!あ、じゃあ、もう行くからな!いい子にしてるんだぞ!絶対、こいつを信用するな。純一くんを信用しろ!!」
そう言い聞かせる真一
「「はーい。」」
そう言って自宅に帰ってきた京介一行
「んで、その子供たちを今日一日預かると?」
「うん。」
純一はその子供をしばらく凝視してから
「わかった。」
そして、村山真一の息子の村山良則と、娘の村山由利の悪夢のような一日が始まった。
「おじさん。」
「どうした?チビッ子?」
そう言って、良則は京介に呼びかける。対して京介はテレビを見ていた。
「ゲームないの?」
「うーん。残念ながら、純一くんも僕もやらないんだよねぇ。ゲームねぇ。ああ、楓ちゃんならどうにかしてくれるかな?」
対してテーブルでそれぞれ、本を呼んでいた純一と由利。ちなみに参考書は『サルも殺せる帝王学』だ。そして、由利が見ているのは『サイババと70匹の妖怪』だ。純一は本を読みながら口を開く。
「楓なら、今日は他社の視察学習だって、言っていたよ。」
「他者の刺殺!?なんて物騒な!?」
「それは『他の者を刺し殺す』な。『他の会社を視覚観察』の視察だから。」
そう言うと京介は何か無いと考え始める。ここまで真剣に考える京介も珍しい。
「ちっ、使えねぇなこの家族・・・・・・。」
良則の言葉に一瞬周囲が凍りつく。腹黒い子供もいるものだ。
「チビッ子?そんな、舐めた口きいてると、たたき出すよ?」
「え、脅迫?僕は構わないけど、おじさんが困るんじゃないかな?」
「わかった。純一くん、この子マグロ漁船にたたき出してくるわ。1年ぐらいは帰ってこないんじゃないかな?」
別に京介に、怒っている様子は無い。どちらかというと、楽しんでいる。対して、良則のほうは少し震えている。
「べ、別に怖くなんてないんだからな!」
「ゴメン、純一くん。この子、マグロ漁船にたたき出すわ。」
そう言って、堂々と指を差す京介
「やめなさい!」
まるで、親と子が逆転している珍奇な光景に少し興味ありげに観察する由利
「いや、だってさ、こんな傲慢高飛車なんて好みじゃないよ?」
「子供相手に萌えとか言うのを求めるな。親父は両刀使いか?」
そう言って呆れ気味に純一は「サルでも殺せる帝王学」の本を閉じる。
「悪いな。ゲームは俺やらないしな。ゲーム借りてきてやるよ。」
「え、宛は有るの?」
京介は不思議そうに純一を見るが
「親父の実家にあるだろ?取ってきてくれよ。俺、じいさんとばあさんって言うのもなんだけど、苦手なんだよね。親父が3人いるみたいでさ。」
「いや、君、何気に自分の祖父母を汚さないで!」
「だって、じいちゃんはゲーマーだし、ばあちゃんは怖過ぎるんだよ。」
そう、カエルの子はカエルだ。京介の両親、言わば、純一の祖父母も京介を育てただけあって似たり寄ったりな性格である。
「ふぉっふぉっふぉ、そんなことも有ろうかとやってきたぞい。」
「うわぁっ!じ、じいさん!?」
そこにいたのは白髪に杖で体を支えた年配にしか見えない男と、白髪がちらほら見えるが背筋を伸ばした女がいた。
「じいさんと言われるのは心外じゃのう。これでもまだ、40になったばかりだというのにのう。なぁ、母さんや?」
「そうですねぇ。私だって、まだまだ、ぴっちぴちですよ。」
と、2人は頷きあう。
「んで?この子供達は純一くんの子供かね?ひ孫の顔を見られるなんて、わしは何て幸せもんじゃ!」
そう言って、京介の父は2人の子供を見る
「ちがう!この子たちは親父の同僚の子供だ!!」
「そりゃ、そうじゃ、今日はそう聞いてやってきたんじゃからの。それ、そこの男の子、私とゲームでもやろうじゃないか?」
「えー、どうせ、爺臭いゲームとかしかないんじゃないの〜?」
良則はなにやら、面倒臭そうな表情をする。
「喝ッ!!」
「うわぁっ!?」
京介の父の一声に驚いて、良則は後ろに退く。
「侮る無かれ、これまでゲーセンキラーと呼ばれたわしじゃ!」
「なぁ、じいさん。もうそろそろ、変装解いてくれないか?」
京介に言われて、京介の父は変装を解く。すると、どうだろうか。京介とまでは行かないが若い顔立ちで白髪だらけの頭ではなくなっている。
「京介や私も解いていいかぇ?」
「言われなくても解けよ?」
「全く、京介はわかってないわね。」
そう言って、京介の母も変装を解く。明らかに京介の父より若い。
「40過ぎでピッチピチとか言ってる奴に言われたくねーよ。」
「ほほぅ。お母さんに向かって、そんな口を聞くとは・・・・・・。」
「ご、ごめんなさい。美人で麗しくやかましい御母上。言葉が過ぎました。」
「ほほぅ。やかましいねぇ?」
「やべ!つい本音が!?」
そんなやり取りをしている間に由利が純一に話し掛けてきた。
「ねぇ、お兄さん?」
「どうした?由利ちゃん?」
「これのほかに本は無いの?」
「一応、あるけど、つまらないよ?」
「じゃあ、見せて?」
そう言って純一と由利は純一の部屋に入っていく。
「はっ!純一くんが、幼女を連れて自分の部屋に立てこもった!?幼女拉致監禁!?」
京介は『いやっ、この人ロリコンよ!』と言わんばかりの素振りをする。
「ちげぇよ!どーせ、親父の部屋なんて同人誌しか置いてねぇだろ?まともな本は俺の部屋にしかねぇし!」
「え?女の裸載ってる本?」
スッとボケた表情で京介は言う。
「なんで、そこでエロ本を出すかな!?」
「ま、絵本とかは捨てないで置いてあるからね。」
そう言って急に真面目になる京介に、純一は呆れる。
「はぁ〜、絵本で良いのかい?」
「うーん。じゃあ『バイキンでもわかるコンピュータ』」
「ITッ子か!?」
「うるさい黙ってろ!!」
そう言って、純一は手にもっている『サルも殺せる帝王学』の本を投げつける。勿論、それを京介はかわして、その先にいる。京介の父親に『サルも殺せる帝王学』が牙を向いた。
「ぬぅんっ!!」
京介の父親はそれを見向きもせずに叩き落とす。
そんな、和やかと言えるかわからないがそんな時間が過ぎていく中、来客が現れた。
「こんにちわー。純一くんいますか〜?」
と、入ってきたのは視察に行っていた楓だった。
「純一くんなら自分の部屋で幼女と拉致監禁ごっこをしているよ。」
「な、なんですって!?」
鬼気迫った表情で楓は言う。
「誤解だ!!」
すぐに自分の部屋から出てくる純一。
「じいちゃん。つよーい!」
「はっはっは、ヌルいな!ヌル過ぎるぞ!童(わっぱ)よ!強くなりたいか?」
「うん。強くなりたい!!」
「私の訓練は厳しいぞ?それでも強くなりたいか?」
そう言って、偉そうに踏ん反り返る京介の父
「うん!」
「ならば貸してやろう!」
そして、良則が数年後、全戦無敗伝説の作ったのは別の話である。
「まぁまぁ、えっと、純一くんの彼女さん?」
「あ、あなたは!?」
「えっと、どうかしました?」
楓は京介の母親を見て驚愕する。
「あの、東大を首席卒業した。片島 恵理子さんですよね。『彼氏を飼い慣らせ』は感動しました!!」
ここで明らかになるが京介の母親の名は『片島 恵理子(かたしま えりこ)』、ちなみに父親の名は『片島 平祐(かたしま へいすけ)』である。
そして、楓は恵理子に握手を求める。
「うわぁ。この思い出は一生忘れません!」
「私も一ファンに会えるなんて思ってもいなかったわ!純一くん!彼女を悲しませるんじゃないわよ!もしそんなことをしたら・・・・・・。」
「したら?」
恵理子の目が鋭く光り
「全国にばら撒いて、その内臓抉り出して、偽造の遺書作って、保険金もかけるわよ?」
「何か、並々ならないこと言ってるけど、順番ちょっと違わないか?母さん?」
京介が珍しく真面目なツッコミを入れる
「そう?まぁ、大事にしなさいよ!」
「それは勿論!」
純一は胸を張って言う。
「ヌルいわ!もう少しキャンセルの見合いを図れ!!4フレ遅いわ!!」
「はい!師匠!!」
恵理子がその光景を見て、幼児と老人のアツいBL物語が作られたのも別の話である。
「んで、純一くんが幼女を連れ込んだですって!?」
ふと我に返って楓は言う。
「いや、話戻すなよ!ってより、誤解だ!!」
純一はそう言って焦りながらも言う。
「そういや、結構静かだったけど?」
「ああ、由利ちゃんなら寝たよ。」
「何!?そんな寝てる間に、あんなことや、こんなことを!?」
京介は軽蔑の眼差しで純一を見る。
「あのなぁ、ボケるなとは言わんから、誤解を招く発現は止めてくれ。」
「えー、それって、僕に死ねって言ってるよーなものじゃーん!」
「「純一くん?」さん?」
純一の背中に寒気が走る。
「な、なんでしょうか?」
「「浮気ですか?」」
純一が振り返ると殺意の眼差しの恵理子と楓がいた。
「ちょ、ちょっと待て!浮気じゃないし!大体、親父の言うことを真っ当に信じるなよ!!」
「「それもそうね!」ですね!」
京介が心なしか傷ついた気がした純一。そんな、騒ぎのような時間は過ぎていき。片島家の呼鈴が鳴った。
「はいへいほー!」
そう言いながら京介は玄関に向かう。
「引き取りに着たぞ。」
と、現れたのは真一だ。
「うぃうぃ、良則くん。由利ちゃーん。天国のお迎えが来たよー。」
「「物騒な事言ってるんじゃねぇ!!」」
純一と真一のダブルツッコミが京介に襲う。
「嫌だ!師匠に稽古をつけてもらうんだ!!」
「おまえ、どういう預かり方してた!?俺の愛しい愛しい我が子に!!」
思わず京介を掴みあげる真一。これほど親バカなのも珍しい。
「勘で?」
「預かるな!純一くん!!」
「ま、まぁ、俺のじいさんが良則くんと遊んでて、由利ちゃんは俺の部屋で本を読んでましたよ。」
「お兄さん。この本貸してください。」
と、由利が純一の服を引っ張って聞く。その手にもっていたのは「一撃必殺!ウィルス作成講座」という本だ。なぜ、こんな本が純一の家にあって、由利が借りていくのかが疑問である。
「あ、ああ、いいけど・・・・・・。」
「ありがとう。お兄さん。」
そう言って靴をはいて、京介宅を出る由利
「よ、よく教育されてますね。」
「あ、ああ、本が好きでね。」
言いよどむ真一。どうやら、真一も手を焼いているらしい。
「童よ!もし、再び修行したくば、ここに来るが良い!いつでも相手してやろうぞ!!」
そう言って、平祐は名刺を良則に渡す。
「う、うん!わかった!!」
「これで後継者ができたぞ。」
満足そうに甲高く笑う平祐。そして、良則は
「お兄ちゃん。ごめんね。態度悪くて、お兄ちゃんのお父さんは怖いけど、お兄ちゃんのおじいさんは凄い人だってわかったから、苦労してるんだね。」
と、良則は純一に言う。少しその理解に思わず、涙が出そうな純一であった。だが、祖父が『凄い』という基準がそこはかとなくわかってしまうため、複雑な気持ちでもあった。
「真一さんのお子さん、よく教育されてますね。」
「あ、ああ、妻の教育だが・・・・・・な。」
なんか少しやつれたように見える真一。
「ま、何がともあれ、助かったよ。」
「うん、じゃあ、なんかあったら、また頼んでね。キミ好みの性格にしておくからね。」
「いや、今度から、片島祖父母に預けたい限りだ。」
そう言って村山親子は帰っていった。
「あれ、じいさんたちは?」
と、テーブルの上に置いてある紙切れに気付く。
『はぁーい、純一くん、京介。今日は楽しかったわ。早く、ひ孫の顔が見たいわ。勿論、子供はアメフトできるぐらいに作るのよね?頑張ってね!!応援してるから!By 京介の偉大なる母 片島 恵理子様』
と、綺麗な文字で書いてあった。
「あの人は何を望んでいるんだよ。」
「それはもう、私達の未来ですよ!!」
熱説する楓、純一は無言で苦笑する。
もう一つ紙切れがあった。どうやら、平祐が書いたものらしいが・・・・・・。
『生きろ 片島 平祐』
と、達筆で書いてあった。
「何に対して生きるんだ?」
「案外、『生(ナマ)きろ』かも知れないよ?」
「いや、ない!その選択は絶対無い!」
そう言って、楓も家に帰って純一はベランダでコーヒーを飲んでいた。
「あー!純一くん!また、僕の豆つかったね!!」
と、居間の方から京介の声が聞こえる。
「いい加減!目印つけろよ!紛らわしいから、わからねぇんだよ!!」
「どうだったい?子供を預かるってのは?」
「よくわかんね。確かに大変だと思うけどね。」
純一は難しそうな顔をして言う。
「うん、それがわかってれば十分じゃないかな?」
「え、それだけで?」
「うん。僕も大変だったよ。キミを引き取った時は、泣くわ。喚くわ。ま、一度、富士の樹海に放り込んだこともあったね。」
ヘラヘラと笑う京介。
「幼児虐待じゃねぇか!!」
「いや、嘘に決まってるじゃん。」
そう言って純一は京介を殴る。
「殴るぞ?」
「だから、殴ってから言うんじゃないの!!」
そう言って、京介は起き上がる。
「けど、大変だったよ。院長は?とかね。」
「あー、なんか、覚えてる。」
「ま、今じゃ、こんなにたくましくなって、お父さんは嬉しいよ。よよよ・・・・・・。」
京介は自分の袖で目じりを拭く。
「嘘泣きは止めようぜ。」
「やっぱりー?」
そう言って、純一と京介の託児所な一日に終わりを告げた。
「そういえば、いつ出来ちゃった婚するの?」
「寝言は寝て言え!!」