親父の突然の一言から始まった。
片島父子の家庭事情
「純一くんさぁ〜?」
「ん?どした?親父?」
純一はたまたま、純一の父、京介が仕事場から持ってきた一般向同人誌を見ながら返答する。
「結婚とかどう?」
純一は京介の突然の問に思わず肺の空気を全て吐き出してむせる。
「え、許婚とかそう言うのいるのかよ!?」
「?」
ふとわからないという表情をする京介だが、すぐに笑い。
「そうだよ。許婚がいるんだよ!」
「ちょっと待て、そんなの初めて聞くぞ。」
「はっはっは、今考えたからね!」
そう聞いてから純一は有無を京介に殴りかかった。そして、見事命中し、京介はよろけてテーブルに頭をぶつける。
「殴るよ?」
「殴ってから言うんじゃないよ!!」
京介も少し怒り気味だが、大人の威厳かすぐに平静を立て直す。
「まぁ、一応、こういう人はどうかなってのはあるよ?」
「ふーん。聞いてみようじゃねぇか?」
純一はふんと言いながら、イスに座る。
「グラマーでー。」
純一はうんうん、頷く。
「ロングヘアーでー。」
「うん。」
「綺麗で、清楚!」
京介はそう言ってビシッと指を刺す。
「それだけ?」
純一は冷たい視線で京介を見る。
「まぁまぁ、まだ、他にも特典があるんだって!」
「なんだよ?」
「社長令嬢!玉の輿だよ!玉の輿!!」
そこで純一は楓を思い出す。そして、テンションの高い京介に半端な返事をする。
「あ、ああ・・・・・・。」
「そして、背中にはビームサーベル!!」
「ちょっと待て!何者だ!そいつ!!?」
間違いなく突っ込めるところである。
「手にはドリルとマシンガン!!ロマンだろ!?あ、でも6連チェーンガンだったら燃えだよ!!」
そう言って、テーブルをバンとたたき上げて言う京介。
「だから待て!!アンドロイドか?」
「うーん。そういう設定のほうが、僕がモえるかな?」
そう言って、うーんと考え込む京介
「それは、どっちのことを言っていやがるんだ?クソ親父?」
「そりゃ、草冠の萌えでしょ!?」
京介が断言するあたり、純一は頭を抱え始める。
『なんでこう、オレの親父はアキバ系なんだ?』
そう思いつつも、本心を突く言葉を口にはしない純一。これでも純一は京介を尊敬している。汚い言葉を吐いたりするが、唯一、育ててくれた一人の親だからだ。
「ま、そんな感じで、君は楓ちゃんにベタ惚れなんだね?」
「うっ・・・・・・。」
そして、鋭いのだ。何も考えていないようで、観察眼も有れば、頭も良い。ただ、問題なのが
「まぁ、できちゃった結婚も僕はオーケィだからね!」
性格だ。
「ば、ばっか!それは絶対、やらねぇ!楓は良いかも知れねぇけど、オレはちゃんとした恋愛したいんだ!!」
純一は顔を真っ赤にして言う。
「はっはっは、気にしないで、僕は不干渉だよ。だからって、一人で抱え込んじゃ駄目だよ。もし、相談事や助けが欲しかったら言ってね。」
そう、それでも京介は父親なのだ。小学校の頃の参観日、中学校の時の参観日、保護者が関わるものは全て出席している。御陰様で、日陰向きの純一も同級生の家に顔を出せば、大体、親や同級生から、面白おかしくからかわれるのだ。
『純一くんのお父さんって面白い人よね?』
と、言われる。それもそのはず、小学校の頃の参観日で一番、思い出に残っているのはマサイ族らしい民族衣装で参観したりした。運動会のときはとんでもなかった。どこかの勢力の大きい暴走族が応援に来たのだ。しかし、その暴走族は物凄く腰が低く。
『お茶とかどうですか?』
『あ、オレも草野球やってるんですよ!』
『最近、うちの息子も反抗期でして・・・・・・。』
と、周りの保護者をある意味圧倒させるほどの腰の低さで世間話をしたり、借り人競走で、運動会よりも逆に仮装大会になりかけたこともあった。
保護者会のときはどっかの宇宙外交官もよろしくと言わんばかりの真っ黒な服装で向かっていった。しかし、そのせいでいじめられたこともあった。
『おまえの親父、ちょっと、おかしいんじゃねぇの?』
『いや、かなりおかしいから』と言っても絡んでくる同級生もいた。しかし、その度に
『あぶなーい!』
と、何処からか現れる親父がかっこよく思えた純一だ。その度に純一は思う。
『ああ、親父に愛されて生きているんだなぁ。でも、いじめをどうやって、いや、むしろ、仕事してるのか?』
と、思う。たまに錯覚するときもあるが・・・・・・。しかし、本人は知らない社長特権。いわば、職権濫用だ。
怒られるときはとても怒られる。
『いいかい?僕が怒っているのは、人が悪いと言うのをわかっているのに悪いことをしたからだよ。』
怒っていても決して、言葉を乱さない。だけど、普段から、ふざけている人が怒ると心なしか、純一はとても落ち込んだ。
そんなことを思いふける純一。それでも純一は兄弟がいなくても父親がいた御陰で寂しい思いはしなかった。
そして、現在・・・・・・。
「はぁ、性格さえ、まともだったらなぁ・・・・・・。」
「純一くん。それは僕に対して死ねって言ってるのかい?」
そう言って京介は、紅茶を出す。こういう風に家族団欒ですごすことも多い片島家。
「まぁまぁ、純一さん。これが、お義父さんのいいところですよ。」
ギョッと純一が振り向くとソファには楓が座っていた。
「か!楓!いつのまに!?」
「いえ、普通に入ってきましたよ?鍵を開けて・・・・・・。」
そう言ってチャリンと片島家の鍵を見せる楓
「え・・・・・・って!親父!どこにいく?」
忍び足でその場を去ろうとする京介に純一は呼びかける。
「いや、ね?あれでしょ、ここは若いの二人に任せて、僕は退散しようかなって?駄目?」
「いや、そんなことを言ってるわけじゃなくてな?」
純一は笑顔だが、目が笑っていない。
「親父!ソファ!!」
「はいぃっ!」
そう言うと京介は犬の如く、ソファに座る。
「楓の横はオレんだ!ほか座れ!!」
「はいぃっ!!」
そう言われて、床に正座する京介。
「いや、別にさ。悪いって訳じゃない。でも、なんで俺に一言相談してくれなかったんだよ!?」
そう言って純一は問いただすが、京介は悪びれた様子も無く。
「え?だって、そうじゃない?僕なんて夜しか家にいないから、純一が『僕に内緒』でやってるバイトで帰ってくるのが遅いときがあるから、その時に楓ちゃんが家で御飯作ってくれるときとか便利じゃん?」
形成が逆転した。京介はテーブルのイスに逆座りして
「純一くん?正座?」
「はい・・・・・・。」
純一はしょんぼりと床に正座する。
「あ、楓ちゃん、純一くんの部屋から座布団持ってきて?」
「あ、はい、わかりました。お父さん!」
「ああ!義理の父と書いて『お義父さん』!いいねぇ。」
クネクネと不気味に体を動かしている京介を放っておいて、楓はソファから立ち上がって純一の部屋に入ろうとするが・・・・・・。
「ちょっと待った!今、部屋散らかってるんだ!俺が取ってくる!!」
純一は焦って楓の前に出る。そして、その楓の後ろでニヤニヤと笑っている京介がいる。
『あんにゃろう。知ってて言ってやがるな。』
純一、ぎろりと京介を睨みつけるが京介は知らんと言わんばかりに上手に口笛を吹く。
「もしかして、純一さん・・・・・・他の女の人を連れ込んでますね!?」
「ち、違う!そんなんじゃない。オレは楓一筋だ!!」
純一は決死の覚悟でそう言うが
「じゃあ、中を見せてもらっても大丈夫ですよね?」
それも空しく楓が純一の肩を掴む。
(親父!何とかしてくれ!!)
純一は片島家伝統の指だけのジェスチャーで京介に合図する。ちなみに、伝統と言っても京介と純一しかわからないし、伝統でもなんでもない。
(じゃあ、君の大事に仕舞っているプリンで?)
『あ、あんちくしょう。足元見やがって!知ってんのか?あれは1日限定50個生産の【超・満足堂】のプリンだぞ!?』
「じゅ〜んい〜ちさ〜ん!?」
ギリギリと肩への力が強まっていく。このまま行けば、肩が粉砕される勢いだ。
(ちくしょう!仕方ない!それで、手を打とう!)
(おっけー!)
そう言って、京介は一回、咳払いをして
「楓ちゃん。もう良いよ。純一くんの部屋に入ってるのは成人男性向けの本が散乱してるから見せたくないだけだよ。」
「あら、そうなんですか?そうなら、そうと言ってくれたら良いのに〜。」
楓は安心して、肩を放す。
と、同時に純一への肩の力が抜ける。そして・・・・・・。
「親父ィィィィィィィィ!!!!!!」
純一の魂の叫び声が聞こえた。
その後、結局、楓は純一の部屋に入って
「純一さん・・・・・・。やっぱり、胸の大きい人が好みなんですか?」
楓は胸囲についてショックを受ける。世辞なくしても楓も大きいほうだが、本に載っている女性はそれより大きい。
純一は焦って弁解しようとするが
「あ、いや、それはその・・・・・・。」
「もういいです!」
その後、楓が口を開くまで3日かかったらしい。