純一が学校に入学してから3ヶ月が経過した。それは純一には平穏な毎日であった。それを崩すのも簡単なことである。そんな彼の学校生活で、ある日のことだった。
片島純一の唐突な学校
「純一!毎日青春を謳歌しているか?」
放課後、純一は呆けていたが、そんな所に友人の渡利達郎(ワタリ タツロウ)が話し掛けてきた。
「初めからそんな切り出しだと返答に困るけど、それなりに青春を楽しんでるよ。」
「ほほぅ?それは例の吉川嬢か?」
「なんか、言い方が気になるけど、答えはイエスだ。」
純一は面倒くさそうに答えると達郎はうなづいて
「それで?今日は何のようだよ?」
「おっと!忘れていた!」
達郎は、ぽんと手を叩いく
「純一、私にも想い人というのができてな。経験豊富なおまえに教えを請いに来たのだ。」
純一はぶぜんとした態度で答える。
「何、タダとは言わん。食堂の食券20枚でどうだ?」
そう言って達郎は食券を20枚、扇子のように見せる
「わり、オレの昼飯って楓が作ってくれているんだ。」
「ふむ。ならそれは仕方ないな。なんて言うと思ったかぁー!!!」
「ブチギレかよ!!」
うんうんとうなづきながら純一は隣の席に座る。
「んで、話を聞いてもらえるだろうか?」
「うーん。そういうのは楓に聞いた方が良さそうな気がするが?桶は桶屋って言うだろ?」
久しぶりに真面目なことを言ったなと頭の中でうなづきつつ純一が言うと
「ふむ。間違いない。だが、私は吉川嬢と面識がない。吉川嬢とコンタクトを取ってくれないか?」
「えー、めんどくさい。」
「タダとは言わん。さっきの20枚に、20枚追加しようじゃないか!」
と片手うちわだった。食券は両手うちわになる。
「お前は食券をいくつ持ってるんだ!?」
思わず突っ込む純一に
「落ち着け。これでも切羽詰っているのだ。手段など選んでられん。」
「ふーん。じゃあ、楓の部活終わったら紹介するよ。今日連絡してやるから。楓も今日は早めに帰るといっていたからな。すぐ戻ってくる。」
「そうか。それはすまないな。私も惚れたいぐらいだ。」
「大丈夫だ。そんなことしたら、楓にぶっ飛ばされると思うし、俺もぶっ飛ばすから。」
「純一くん。部活終わったよー。」
「おう。ごくろーさん。」
そう言って楓が現れる。
「で、この人は?」
「相談事があるらしい。こいつはオレのクラスの渡利達郎って言ってな。恋をしたが、どう接触すればいいのかわからないらしいんだ。」
「へー?相手は?」
少し疑わしそうに達郎を見る楓
「山下 誠(ヤマシタ マコト)先輩だ。」
「「え゛………。」」
純一と楓は思わず、声にならない声をあげる。
「どうした?二人とも?」
「「まぁ、人それぞれだもんな(だもんね)!?」」
そう言って二人は達郎の視線をそらしながら言う。
「まぁ、なりそめだけ聞いておくか…。」
「ああ、それはだな____。」
(省略)
「へぇ。たまたま、誠先輩が絡まれているのを通りかかった所、その相手を返り討ちにしたのがきっかけねぇ…。どう思う。純一くん?」
「まぁ、あの先輩だからなぁ。さすが、西の黒龍とか言われているもんなぁ。」
「二人は、その人を知っているのか?」
ふと疑問に思ったことを口にする達郎
「あ、ああ、中学のときの先輩でね。」
「私は、部活に入ったときに知り合いました。」
「山下先輩は何部なんだ?」
「ああ、帰宅部だぞ。」
「いや、純一。お前のボケはイマイチよくわからんからボケなくていい。」
達郎に言われて純一は
「あぁっ!純一!!そんな露骨なツッコミされたからって落ち込まないで!!」
教室の隅っこで暗いオーラを出しながらのの字を純一
「まぁ、それはどうでもいいのだが、本当に何部なんだ?」
「コン部よ。」
「…類は友を呼ぶ。」
クリティカルヒットだったらしい。純一と楓は二人揃って肩を組みながらのの字を書いている。
「だぁぁっ!話が進まん!一体何部なんだ!?」
しまいには達郎が怒り出して、二人はやれやれと立ち上がって
「剣道部よ。」
「なるほど、どうりで、あそこまで強いわけだ。」
うんうんうなづく達郎だが、にやりと笑う楓
「まぁ、タダの剣道部じゃないけどね。」
そう言われて寒気を覚える達郎だった。
「ほら!なにやっている!!上段蹴り5セット追加!!」
そこでは剣道部のはずなのに空手らしい練習をしている剣道部員の姿があった。
「なぁ、純一よ?」
「ん?どうした?」
「ここが本当に剣道部なのか?」
「ああ、剣道部だ。まぁ、一風凝らした剣道部だがな。」
「凝らしすぎだ!!」
大声をあげる達郎に、指導している部長らしき生徒が
「そこ五月蝿い!剣道部に入るなら礼儀をわきまえろ!!って、片島じゃないか!?今日こそ、部に入る気になったか!?」
恐らくは先ほどの山下先輩と呼ばれた人物だろう。
「あ、いや、ちょっと、様子を身に来ただけであって………。」
「なら、なんだ?そこの男子生徒と剣道場でバラ色な世界でも見せ付けにきたか?」
「「まさか!」」
大声を張り上げる純一と達郎
「そんなぁっ!純一くん!私という人がいながら!!」
そう言いながらよよよと泣き始める楓
「ちょっ!おまっ!誤解だ!誤解!!」
焦って否定する純一に
「なーんてね。純一くんがそんなことする人じゃないってわかってるよ!」
「なっ!あー!もう!マジでビックリしたじゃないか!!」
「えへっ!純一くん!!」
「楓!」
そんなやり取りを見ている誠と達郎は
「なぁ、アレを見せ付けに来たのか?」
呆れながら質問する誠に
「い、いや、違いますけど?」
やや緊張気味の達郎。
「じゃあ、どうしたんだ?」
そう聞かれて達郎はビクンと震えて
「先輩!お話があります!!」
達郎が誠を呼んだのは体育館裏だった。
「どうした?何があるんだ?」
「あ、オレ!渡利 達郎と言います!」
「ほー、今時にしちゃ珍しいじゃないか?私は『山下 誠』だ。」
感嘆しながら誠は返答する。
「はい…知ってます。それでなんですけど先輩。」
「なんだ?」
「友達からでいいですから!付き合ってください。」
そう言って頭を下げる達郎。そして、一時の静寂。
「…いいだろう。」
返答が出て、達郎は頭を上げる。
「しかし、条件がある。」
「なんでしょうか?」
「私に勝てたらな!!」
そこで達郎の顔が引きつっていたのは気のせいだろう。
道場前で達郎は四つん這いになってどんよりしていた。
「達郎?勝ったか?」
慰めるように達郎の肩をぽんと叩く純一
「無理。先輩強すぎ。」
「まぁ、そうだろうね〜。」
「はっはっは、挑戦はいくらでも受ける。渡利君も純一ぐらいに強くなるんだな。」
「純一?お前!二股か!!おい!二股なのか!?」
そう言って純一の肩を掴んでグワングワンと揺する達郎。
「い、いや。これは先輩が挑んできただけだし、オレは楓、一筋だし‥‥‥!」
「きゃっ、純一くんったら、こんなみんなのいる前で!」
そう言って両頬を抑えて顔を赤くする楓
「そうだよ。君さえ、いれば、どこまでも…。」
「純一君…。」
「楓…。」
そう言って抱き合う二人
「まぁ、アレは放っておいて。先輩、本当に純一に負けたんですか?」
「ああ、うちの人材に欲しいぐらいだぞ。この学校に来てからは、なりを潜めたんだがな。」
「へぇ。いつも教室でひっそりとしてるのに…。って、もしかして、純一が勝ったから先輩は狙って?」
「いや、単に、うちの部員は御世辞でも弱い。だから、あのような手練な人間が欲しいのだ。まぁ、フリーだったら狙おうと考えていたのだが、あの様ではな…。」
「確かに…。」
今でも幸せオーラを出している二人。どう考えても入れるような雰囲気ではない。
「まぁ、男の私では介入できる余地はないな。」
瞬間、達郎が固まった。
「…先輩。一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「今、不穏当にも男という単語が聞こえたのですが?」
「いや、不穏当も何も私は男だが?」
達郎は固まるを通り越してヒビが入った。
「んな!馬鹿なぁーーーーーーーー!!!!」
「はっはっは、そうかそうか。私が女だと思っていたのだな。大丈夫だ。こう見えても私は男色家(ゲイ)だ。」
そんな彼を打ち崩したのは山下 誠。高校二年生。男。性格:男色家だった。