その場所は「コンプリート片島ドージンズ」の事務所だ。名前は結構大きいイメージを持たせるがつい最近創設したばかりの会社だ。主な仕事は有名な同人会社から省かれたサークル。言わば弱小サークルたちを保護するような会社である。
「社長。今回のサークルの件ですが…。」
「うーん。まかせる。あそこの代表好きじゃないし。任せるよ。」
 そう行って社長は書類に目を通し始める。彼の名は片島京介(カタシマ キョウスケ)同人委託会社『コンプリート片島ドージンズ』の社長である。
「神奈義くん。この書類なんだけどさ…。」
 やはり、家にいるときと違い、キマッタ表情で部下に話し掛けていく。
「はい?なんか誤字ありました?」
 京介は社員デスクの方に向かっていく。
「いや、それはないんだけどさ。この同人の保管の傾向を考えると倉庫、もう一つ借りた方がいいんじゃないかな?」



片島京介の毎日



 すこし離れたデスクには『神奈義 恭子(カミナギ キョウコ)』という女性が京介の方に顔を向けていた。
「そうですね。じゃあ、どこかマフィアでも襲って倉庫剥奪しません?」
 ここに不穏当な言葉を出す女性社員が1人。
「いいねぇ!さすが神奈義くん!んじゃ、行こうか!?」
 しかし、京介は京介だった。
「ちょっと待て!」
 そう言って京介の肩をがっしり掴む影が一つ
「どうしたの?村山くん?マフィアはだめかなぁ?」
「そうですよ。マフィアじゃなくてヤクザにしましょう!」
「いや、それ以前にね。君達の殴りこみの時点からおかしいから!!」
 副社長の『村山 真一(ムラヤマ シンイチ)』が静止に入らなければ、この二人は本気でマフィアやらに殴りこみに行ったのだろう
「じゃあ、どうする?普通に不動産屋に行って借りてくる?」
「仕方ないですね。社長は暇そうですから行ってきてください。」
「わかったよ。」
「ちょっとまて、神奈義…。」
今度は神奈義の肩を掴む真一
「はい?」
「立場を考えろ!社長に行かせるなら社員に行かせるのが道理だろう!?」
 真一の言っている道理は間違いないのだが…。
「いや、だって…。」
 恭子は京介の顔をチラチラと見て頬を赤くして
「いや、だって?」
 真一は言いづらそうだったので訪ねると
「社長とはマブダチだし…。」
「マブダチとは聞き捨てならん!!」
 バンと机をたたき上げ、他の社員を驚かせるほどに怒ったのは京介だった。

「そんな死語、僕は認めん!!せめて!」
「「せめて?」」
「女王様と呼んでもらおう!!」
「性別考えろ!!!」
 逆水平チョップで突っ込みを京介に入れる真一
「はっはっは!なんてったって僕だからね〜。」
「なぁ、こいつ、張った押していい?」
「『押し倒していい?』ですって!?」
「張った押すだ!!」
 思わず突っ込む真一は気が付いていないだろう。すでにこの二人のペースに巻き込まれていることを…。
「押し倒すのは私よ!!」
「話聞けや!!」
「そんな、押し倒されるなんて…ぽっ。」
 京介は頬に手を当てながら体をクネクネさせる。奇怪である。
「まぁ、そんなわけで不動産屋行ってくるよ。」
 そう言って三段跳びで京介は事務所を出て行く。
「はぁ、オレ、仕事やめようかな?」
 身に見えてうなだれる真一にポンと肩を叩く恭子
「じゃあ、私から一言。」
「なんだよ?」
 疲れた顔で首だけ恭子の方に向ける真一
「脱サラ?」
「縁起でもねぇこというんじゃねぇ!!!」

 そのあと真一をなだめたのは恭子以外の社員だった。ちなみに恭子は仕事に戻った。
「副社長。類は友を呼ぶって言いますし…。」
「じゃあ、オレはあいつとは高校の友人だが、オレも類なのか?」
「え、いや、あははは…。」
 新入社員『霧崎 裕香(キリサキ ユウカ)』がなだめる。実はこの会社は4人だけで成り立っている。面接に来る人間はそれなりといるのだが、社長が面接すると決まっているのか全員落ちることが多い。例外を除いては、そうその例外こそが『神奈義 恭子』の他ならない。ちなみに裕香は副社長である真一が採用した。ちなみに面接は社長が2回ぐらいやって以降、副社長が変わって面接をするようになった。ちなみに京介いわく
「殺伐とした考えを持った人や、奇抜な考えを持つ人じゃないと採用する気はないよ♪」
 と言う。
「しかし、副社長が辞めたら、誰があの二人を止めるんですか?」
 そう裕香が言うと、真一は笑って彼女の肩を掴み。
「よろしく頼んだ。」
「おもしろい洒落を思いつきますね?」
 即答で、なおかつ笑顔で返す裕香。しかし、目が笑っていない。
「わかってる。オレがやめたらこの会社、秒で潰れるもんな…。」
「そうですよ。神奈義先輩や片島社長みたいにスーパー奇天烈ヒューマノイドを誰が止めるんですか?それはもう副社長しかいないでしょう!?あなただけが最後の希望なんです!!」
 そう熱説する裕香。だが、その裕香の口の端はにやりと笑っているのは恭子しか見えていなかった。
「………ちょろいもんよ」

「だけどな。オレ、たまに自身を無くすんだよ。」
「どうしてですか?」
「倉庫二つ借りれたよ〜!」
 と、早々に戻ってくる。
「「はっや!!!」」
 真一と裕香は声を揃えて言った。
 事務所を出て1時間程度だった。この事務所は、住宅街にあり、2階建ての小さな事務所だ。ちなみに2階に事務所はある。1階はクリーニング屋である。
「そんな、不動産屋結構遠いだろ。」
「大丈夫!僕のマイバイクにかかれば!」
 マイバイク、実はマウンテンバイクで社長である京介の私物である。ちなみに、この事務所には物置があり、社長、社員が必要だと思うものが置いてある。最初は同人誌を置く為に作っていたのだが、思ったより、委託が多かったので倉庫を借りることにした。そのさい、物置が空き部屋になり社員達の私物置き場になっている。ちなみにマウンテンバイクには名前があり『ヤッター男1号』だ。決してヤッター〇ンではない。
「まぁ、僕のヤッター男1号の性能と僕のスペックのお陰だね。」
「はいはい、ありがとうございました。しかし、この調子だと、どこか土地を買って倉庫とか建てたほうがいいんじゃないか?」
「僕もそう思ってはいるんだけどね_____。」
 ちなみにこれが彼らの日常である。そして、社訓が
『今日も今日とて、我が行く。障害物は蹴っ飛ばせ!(我はオレと言う読みでも可)』である。


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